大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2558号 判決

(二) してみれば、汽船の船尾部分に接近する艀およびその曳船の船長は、自船を右汽船のプロペラに接触させないよう(右プロペラが回転中であれば、自船の安全にかゝわり、又プロペラが停止していても右プロペラを損傷するおそれがある。)細心の注意をなすべき義務があるものと考えるのが相当である。ことに自航力を有しない艀を船尾付近のハツチに曳航する曳船の船長としては、艀を目的の位置に曳航した後においても、艀が舫い綱により本船に固縛され、海水の流れ等により意に反して移動するおそれがなくなるまで艀の動静、海水の流れ、付近航行の船舶等に注意を払い、艀が本船の船尾方向に流動するのを認めれば、直ちに曳綱等の操作によりこれを引き戻すか、少くともその動きを止め、もって艀が本船のプロペラと接触するのを防止するため万全の措置をとりうるよう準備すべきであり、又艀の船長もまた自船が自航力を有せず、その流動を自力で防止する能力を有しないのであるから、艀が舫い綱により本船に固縛されるまでは、艀の動静、海水の流れ等に注意して自船が本船の船尾方向に流動するのを認れば直ちに曳船の船長に連絡するなどして、その流動を止める努力をなすべき義務があるものと考えるのが相当である。そして当時本船においてプロペラの回転を標示する警告燈の点燈ないし標識の設置がなかったとしても、このことは各船長らの前記義務を軽減するものということはできない。しかるに曳船の船長田京および本件艀の船長竹山は、これらの注意義務を怠り、曳船の船長田京は、本件艀が本船の五番ハッチ付近に到達した際、惰力を失って完全に停止しておらず、舫い綱が本船上に引き上げられただけでいまだ本船に固縛されていないにもかゝわらず、又本件艀の船長の合図を待つことなく、大丈夫と速断して、曳綱を離してしまい、さらに本件艀の本船船尾方向への流動の発見が遅れ、その流動を発見したときはすでに遅く、本件艀を引き戻すべく、その船尾に廻ろうとしたが間に合わなかったのであり、本件艀の船長竹山も本船五番ハッチ付近到達後、艀の動静、海水の流れ等に対し注意を払うことを怠ったため、自船が本船のプロペラに接触するまで自船の流動に気がつかず、従って事前に曳船の船長に連絡する等することができなかったのであって、これらの事実よりすれば、本件事故は曳船の船長田京と本件艀の船長竹山の過失によるものということができる。

(石田哲 小林 関口)

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